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2020年5月31日 (日)

「言葉にできない」と言葉にできる/ You can say "I can't make it into words"

 私は、小田和正の名曲「言葉にできない」(1982年)を聞くと、つい突っ込みを入れてしまいます。「言葉にできてるじゃん!」と。

 キリスト教神学に「否定神学 apophatikē theologia 」というものがあるそうで、こういう理屈です。

「神は考えられもしないし,名ざすこともできず,ただ,神はこういうものではないと言えるだけである」
 集英社世界文学大事典/ディオニュシウス・アレオパギタ(Dionysius Areopagita)の項/田中博明筆

 童謡「浦島太郎」にも、「龍宮城へ来て見れば、絵にもかけない美しさ」とあり、「絵に」は「かけな」くとも、歌詞には書ける好例でしょう。

 言葉の力能。「言葉」は「言葉」の世界では全能と言えます。人類が身体上の「表現型」で進化の必要性が無くなったのは、恐らく「言葉」を獲得して以降なのだろう、と思います。

 それは裏面から言えば、人類が、他の動物の「群れ」とは異なる「社会」を為して生命を維持するという生存戦略を選び取ったことと同値でした。というのも、「言葉」には「発信者」以外に「受信者」が必要であり、他の動物では身体上の表現型と遺伝子に蓄積される「進化知識」は、「ひと」と「ひと」の間の「社会」に「言葉」として蓄積されるからです。「進化知識」が media としての「言葉」に蓄積してくれるなら、「身体」を変形させる必要性は皆無となります。

〔参照〕
言葉は意味を孕んでいる Language conceives meanings and images: 本に溺れたい
言葉は意味を孕まない(Language doesn’t conceive meanings and images.): 本に溺れたい
インターフェースとしての言葉( Language as an interface ): 本に溺れたい

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