「禁裏様」と二十一世紀
『21エモン』という漫画をご存知でしょうか。藤子・F・不二雄が1968年から1969年にかけて『週刊少年サンデー』に連載したSFコメディです。私は小学生の時分、その連載を読んだくちです。
著者は、主人公の命名に古めかしい雰囲気を出す小道具として利用したのでしょうが、「衛門 えもん」「輔/助/介 すけ」といった名は、朝廷による律令制の官名です。つまりそもそも「禁裏様(≒天皇)」にその起源を持つものです。
現在、「天皇 てんのう」と発すると、ネガティブな語感が消えませんが、この仕組みは元来百五十年前に「維新」を標榜した「長州・薩摩軍事革命評議会」権力が捏造し、新たに制度設計したものです。それを大正末から昭和初期にかけてマルクス主義たちが批判/革命の対象するために「徴兵制」「六・三制」といったシステム名の語感の乗りで「天皇制」と命名造語した左翼ジャーゴンです。「禁裏様」当人には責任はありません。「元勲」たちも「天皇 てんのう」をお人形としか思っていなかったわけですし。
したがいまして、21世紀の列島住人は、もっと大っぴらに、(もし持っているなら)その親近感を「禁裏様」に対して表明してよいと思います。嫌悪感をお持ちの方はその方で、存分に訴えても宜しいのですが、ただし、戦前の「歴史の捏造」をもう少し承知したうえでのほうが宜しいかと愚考します。
21世紀の今日、もう「長州・薩摩軍事革命評議会」権力の「呪い」を超えて、爽やかに、そして正面から、主権の存する「日本国民」が自分の頭で、「禁裏(様)」を議論し、その国制上の位置を設計し定める時期が到来している、と考えます。
※列島の百姓(common people)には、中世から「禁裏(様)」に対する連綿とした愛着があることの例証としてご参照ください。
百姓と朝廷: 本に溺れたい
※それが中世の惣村(共同体)から現代まで影響を及ぼしているという例証は下記。
若い衆に入ったら、子供心でいるんじゃありません: 本に溺れたい
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