« 江戸モラリズムへの死刑宣告者 | トップページ | このコピー機《は》ランニングコスト《が》高い/ This copier has a high running cost. »

2020年6月29日 (月)

トランプは「覇権主義者」か?/ Is Trump a Hegemonist?

Donald_trump_official_portrait  知人から二つ質問をうけましたので、私流の回答をこちらにも掲載します。

Q1「Robert Lighthizer 通商代表は、かつて日米不公平の通商協定を結んだことで、日本経済に相当な打撃を与えたか?」
Q2.「今の中国との貿易戦争もアメリカ覇権主義の一環か?」

 

Q1「Robert Lighthizer 通商代表は、かつて通商協定を結んだことで、日本経済に相当な打撃を与えたか?」

A1)この件は、Lighthizerが、Ronald Reagan大統領時代にUSTRの次席代表としてやった、日本鉄鋼業の対米輸出自主規制、のことですね。「相当な打撃」は当時(1980年代中盤)あったとは思います。でも、それは経済的というより、メンタル的に。それまで、リッチで鷹揚な親戚のおじさんのように日本製品をどんどん買ってくれていたのに、(日本側からすれば)突然、強烈なクレームを言われた、という感じ。この日米間のトラブルは、中長期的に見れば、日本経済力/産業競争力を高度化する結果になったと思います。アメリカにそんな気など毛ほどもなかっただろうけど。

Q2.「今の中国との貿易戦争もアメリカ覇権主義の一環か?」

A2)アメリカの政治には歴史的に二つの大きな流れがあります。Monroe Doctrine(中西部の反東部メンタリティ) と Manifest Destiny(東部エスタブリッシュメント) 。おおよそ、前者が孤立主義、後者が覇権主義、にそれぞれ対応します。

 前者の起源は、北米植民地が欧州(旧世界)の脱出者(政治犯、破産者、下層身分など)の逃げ場所であったこと。後者の起源は、この新世界(北米)が旧世界(欧州)のAncien Régimeの下では実現できなかった全く新しい「理想国」を現世の地上に出現させたから、その福音を世界中に伝道することがUSAの道徳的義務と米国人が思い込みたかったこと。そして、おおよそ、前者が Republican(共和党員)、後者が Democrat(民主党員)に連なります。だから、権力者が前者だと、強引な自国中心主義となり、後者だと、「良心的」グローバル覇権主義(Neoconなど)になる。

 トランプは、America First だから典型的な前者と考えられ、彼が中国との貿易戦争を仕掛けるのは、世界中に強引な貿易収支の均衡化を求める一環で、米国の貿易赤字の最大の相手国が中国だからに過ぎません。トランプのメッセージは簡単で、「もうアメリカ人には外国に回せるほどの余っている有効需要はないから、今後は君たちこそがアメリカから買ってよ。」ということ。

 経済的余裕がないのだから外国のいざこざから手を引くのは当り前だし、自国の利益を第一に押し出すのも当り前、という自己中心主義だから、それを「覇権主義」をみなすのは、反トランプのメディアによるある種の認識操作と思われます。

以上が私の見立てです。

|

« 江戸モラリズムへの死刑宣告者 | トップページ | このコピー機《は》ランニングコスト《が》高い/ This copier has a high running cost. »

中国」カテゴリの記事

米国 (United States of America)」カテゴリの記事

Neocon」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 江戸モラリズムへの死刑宣告者 | トップページ | このコピー機《は》ランニングコスト《が》高い/ This copier has a high running cost. »