このコピー機《は》ランニングコスト《が》高い/ This copier has a high running cost.
(Q)コピー機《は》故障していますから、あちらのを使って下さい。《》の中は何故《が》を使ってはだめか?
(A)
通常の日本語文法では、
「が」格助詞 体言にくっついて、一文の主語(主格)をあらわす
「は」副助詞 体言にくっついて、その体言を他と区別する、あるいは強調する
と、説明している。しかし、この説明では実はよくわからない。
上記の例文を少し変えて、「は」と「が」を比較してみる。
①このコピー機《は》故障しています。あちらを使ってください。
②このコピー機《が》故障しています。あちらを使ってください。
①は、「話し手」にとり既知の話題、「聴き手」にとり未知の話題(←「コピー機が故障している」)。
②は、「話し手」にとっても、「聴き手」にとっても既知で共通の話題(←「コピー機が故障している」)。
したがって、利用者へのアナウンスとして注意の看板を設置する場合、コンビニの来店客なら、当然、数台あるうちの一つが故障中ということは未知に決まっているから、①が適切。一方、大学の研究室で、3台あるコピー機にうち左端のコピー機が故障していることを、研究室の助手が事前に事務員から注意されているなら、②が適切となる。
③「おまえは、だれだ?」「おれ《は》上田だ。」
④「上田さん、て、どなたですか?」「わたし《が》上田です。」
異端の文法学者、三上章(象は鼻が長い―日本文法入門 (三上章著作集))の顰に倣うならば、
《既知の主格》を指示する「が」。
《未知の主題》を提示する「は」。
と整理してもよい。
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