毎日新聞「今週の本棚」欄2020/10/17
毎日の「今週の本棚」欄で、橋爪氏のものより面白そうだったのが、2点あります。
①マーガレット・アトウッド『誓願』早川書房、鴻巣友希子訳
②高橋博巳『浦上玉堂 白雲も我が閑適に羨まんか』日本評伝選 211 ミネルヴァ書房
それぞれの書評者、タイトルは、
①中島京子「知を奪われた女性の戦いと希望」
②磯田道史「詩文の解析から極北の文人に迫る」
①は、2019年ブッカー賞受賞だそうで、現在の米合衆国を寓話化したものの由。書評はこう始まり、終わります。
『侍女の物語』続編、独裁神権国家、ギレアデ共和国の「その後」の物語だ。
侍女オブフレッドが、記憶と現在を手繰り寄せながら暗闇を進むように語る前作とは違い、三人の異なる話者が登場する。
・・・。国家が文化や芸術、学術を攻撃し、排除する怖さをみにつまされつつ読んだ。
中島氏の語りはすごく面白そうなのですが、氏の教訓めいたまとめで興ざめ。でも、物語そのものはすごく面白そう。
②これもさわりと結びを。
浦上玉堂の評伝がでた。玉堂とは何者か?と問われれば、「琴詩書画の清雅を好み、諸国を漂白した文人」と解説的に答える他ない。・・・。中国学の内藤湖南は玉堂を「天才」といい、建築家のブルーノ・タウトも「近代日本の生んだ最大の天才・・・ゴッホに比することができる」とまでいった。・・・。本書の到達点を足掛かりに、新発見の書簡が出そろった段階で研究がさらに進みそうで愉しみである。
玉堂は、絵画、琴、詩文とその才を発揮したのだから、ゴッホよりも《天才的》のような気がしますが・・。また、玉堂の生没年は、1745-1820(延享2-文政3)です。タウトから見てその画があまりにも modern に見えたということでしょうか。
この書評の中段に私から見て興味をそそることが記述されています。
玉堂研究が重要なのはなぜか。かつて加藤周一は玉堂を論じていった。「『文人』たちは、外国の詩文書画の教養という点で大衆から離れていたと同時に、詩文書画に打ちこむという点で武士の倫理や規範からも離れていった。」近世も後半になると、この国に「文人」があまた生じた。彼らは高い東洋的教養をもち、徳川の世のイデオロギーからの逸脱をはかった。日本中で横につながって文人のネットワークを結び、体制の外で密かに「横議」した。閉ざされた日本をこえた世界の知識を語り合い、次世代への知的準備をしたのである。琴を弾き詩書画で遊びながらである。徳川時代を破壊したのは蘭学や黒船来航だと思われているが、実はもっと根が深い。近世後期に、津々浦々に生じたこの文人の動きこそが維新や近代への胎動を加速させた面がある。
後期の徳川日本で文人たちを脱イデオロギー化した最大のモーメントが、けい園学派(徂徠学派の詩文派)です。
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