After oil を予想すると・・・
中学校教科書は今年度大きく改訂されました。その一世代前の、中学校2年生用の光村図書の国語教科書に、環境考古学者の安田喜憲氏の書き下ろしで、「モアイは語る―地球の未来」という、なかなかじわっと効いてくる好エッセイがあります。
南太平洋に浮かぶ、イースター島に遺されているモアイ像。最大で高さ20m、重さ80トン(JR中央線通勤快速車両2.5台分)もあります。こんなものが、種子島の半分のサイズのイースター島には約1000体も発見されています。この文明の消滅を追跡して解き明かしたのが、安田氏を含む国際研究チームでした。
安田氏は自然地理学者でもありますので、このエッセイの最後で、地球の農耕地は最大で21億ヘクタール、その人口支持力は80億人がぎりぎり、と書いています。一方、1950年の世界人口推計は、25億人です。1950年とは、世界中が石油文明化する直前とみなして良いでしょう。日本では昭和25年ですから、小津安二郎「東京物語」(1953年)で描かれた、戦前でもなく、高度成長期でもない頃の Before oil といった時代です。
としますと、石油のジャブジャブ漬けになる前の人口が25億人で、2019年の世界人口推計値は77億人です。そろそろ石油文明の最大人口の80億人に漸近しつつあります。つまり、
80億人―25億人=55億人
が、石油という「つっかい棒」が雲散霧消すると、餓死する可能性がある人口となります。この数字には、一瞬、現実感を失いかねませんが、この数字から眼を離してはいけないと愚考します。
| 固定リンク
「Peak oil」カテゴリの記事
- 「産業革命」の起源(2)/ The origins of the ‘Industrial Revolution’(2)(2024.11.10)
- Promoting Nuclear Power to Deepen the Energy Crisis /エネルギー危機を深める原発推進(2022.10.27)
- エネルギー危機を深める原発推進/ Promoting Nuclear Power to Deepen the Energy Crisis(2022.10.15)
- 飯田哲也「複合危機とエネルギーの未来」岩波書店『世界』No.952(2022年1月号)(2022.01.10)
- 「自給」と「自然エネルギー」を考える/ Thinking about "self-sufficiency" and "natural energy"(2022.01.03)
コメント