温暖化と日本列島史
日本列島は、およそ北緯45度から30度、東経145度から125度まで、北半球上の中緯度帯に、南西から北東にかけて斜めに細長く位置しています。その特異なロケーションが、慎ましやかなこの弧状列島に多様で豊かな自然環境と生態系をもたらしている自然地理学的前提です。
この東西南北の広がりの影響は、日の出時間で札幌―鹿児島の約1時間20分の差となり、年間平均気温では、札幌―鹿児島の約10℃の差となっています。このどちらが生態系に強い影響力があるでしょうか。無論、年間平均気温です。
従いまして、もし北半球で「温暖化」や「寒冷化」が進行しますと、日本列島の東西は対照的な影響がでます。約1万年続いた縄文時代は、前期から中期にかけて「温暖化」とそれに伴う「縄文海進」が進みました。紀元前5000頃に盛期を迎えた三内丸山遺跡では、青森湾が眼と鼻の先まで海進していました。広葉樹林の植生がもたらす豊かな堅果類(クリ、ドングリ、椎や栃の実)に加え、青森湾からの海の幸(魚介類)の動物性たんぱく質に恵まれ、最盛期に500名にのぼる「都市人口」が推計されています。ところが、縄文中期から後期にかけての「寒冷化」と「縄文海退」のダブルパンチで、急激に人口支持力が失われ、この「縄文都市」は捨てられます。列島全体でも東日本から西日本に人口の大移動があったと考えられています。そしてこれが弥生文明のはじまりとなりました。
その後の列島の2000年史においても、歴史人口学の故速水融は、列島全体が寒冷化するとき、飢饉がより深刻化するのは東日本、温暖化では西日本を飢饉が襲っていると指摘しています。東日本の飢饉は、梅雨時から夏にかけての日照不足、冷夏によるイネ・農作物の不稔、病気による不作です。西日本の飢饉は、夏場の旱魃、水不足による不作、および大発生する虫害、蝗害、です。
もし温暖化がすすみ、Peak Oil による人口支持力の上げ底の底が抜けてしまうなら、フォッサマグナ以西の西日本に、飢饉のリスクが高まる。これが列島史からの教訓です。
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