「自給」と「自然エネルギー」を考える/ Thinking about "self-sufficiency" and "natural energy"
石油涸渇後を想定して、「自給」と「自然エネルギー」を考えてみます。
1)あらためて「自給」を考える
マイレージ mileage(フード、素材資源、エネルギー資源)において日本の浪費癖が国際的に悪名高いことは隠れも無き事実です。従いまして、私は自給国家であった徳川日本からの教訓を現代に生かしたいと思っています。ただ、そのためには、国家のサイズを一考する必要があると思います。国家規模の第一指標はやはり人口規模でしょう。
徳川日本末期(19世紀半ば)の人口が約3300万人です。現在、約1億2700万人ですから、当時の約4倍です。この増えた分は、湯水のように消費できた cheap oil と石油テクノロジー、およびそれを前提とした「自由」貿易のお蔭様です。現代の首都圏(一都六県)でさえ約4000万人を擁しています。となると、この列島社会にうまく人口分散(bio-regionalizationを含む)できたとして、穀物とエネルギーの輸入なしでは、目の子算で5~6千万人くらいが Max かな、というのが私の印象です。
そうなると、日本列島社会だけでなく、世界規模の人口減少が大前提でしょう。幸か不幸か、日本列島の将来人口推計では、ほっといても22世紀を迎える頃は、いい感じに人口規模が縮小しそうです。だとすれば、そのダイエットしたボディに見合う服(資源循環システム)を自転車操業しながら構想し、できればそこへどうソフトランディングするか、ということになるのではないでしょうか。今年はそこへ辿る(未来から振り返れば)第一歩にもなるかもしれない、と思います。
2)自然エネルギー可能性を考える
21世紀の現代、化石資源の採掘場所は「Low Hanging Fruits」で、ドンドン劣化しています。かつてのEPR100の中東の超巨大油田は老朽化し、新しい油田のEPRは劣化する一方ですから、それを平均すると現在の世界石油生産のEPRは10余り(下記:田村著p.67)となります。そのレベルで比べれば、自然エネルギーEPRは化石燃料に対して相対的に有利にはなるでしょう。目安として、以下にEPRの一覧を掲げておきます。
エネルギー収支比(EPR:Energy Profit Ratio)=出力エネルギー/入力エネルギー
〔例えば、1calのエネルギーを投入して、?calのエネルギーを出力すること〕
化石資源系
石炭 80
石油・ガス(1930'陸上/自噴) 93
石油・ガス(1970's,陸上or海底) 30
石油・ガス(1980~,海底/動力) 8
シェールオイル・ガス 2-3
タールサンド 2-3
自然エネルギー系
水力発電 98
風力発電 17
地熱発電 7
原子力発電 5
太陽光発電 4-3
バイオ燃料 1
〔出典:Tullett Prebon Group Ltd.,"Perfect Storm",2013年/1月号、
田村八洲男『石油文明はなぜ終るか』2014年東洋出版より孫引き〕
しかし、「発電」とあるように、当面自然エネルギーを利用して産出できるものは「電力」のみです。小型水力発電所を作る。風力発電プラントを設置する。例えば、コンクリートの構築物を作るセメント原料である、「石灰石」・「ねん土」・「けい石」・「酸化鉄原料」・「せっこう」の、採掘・搬出・輸送(マイレージ)といった製造流通過程の動力エネルギーをすべて「電力」で賄うことは現状不可能です。電気自動車は蓄電池にレアメタルを必須とする事からして、希少資源の迂回投入で無駄であり、世界中でそれを使えは資源涸渇するに決まってます。動力、とりわけ輸送動力源における液体燃料(ガソリン等)の他の燃料に対する有利さは埋めようがありません。電動飛行機は話題になっていますが、電動コンテナ船はおそらく難しいでしょう。それなら帆船技術復活のほうが現実的で有望です。
石油は素晴らしい素材原料として懸絶しています。いま、薬品類の包装、保管容器は悉く石油化学製品です。これに代替できるのは、ガラス容器、紙包装で、昔はそれしかありませんでした。調剤薬局で処方してもらう錠剤は、アルミ製品とプラスチックで包装されています。これほど簡易、便利で清潔な包装材は多分他に求めることは不可能です。豚肉のトレーを竹の皮と新聞紙(?)に置換することや、豆腐を買いに金盥(たらい)を持っていくことは、私のような昭和世代にはギリギリ可能でしょうが。自動車はいま世界で十億台稼働していますが、そのタイヤは石油製品で、それを全部天然ゴムにすべて履き替えるは不可能でしょう。石炭化学製品が最も有望ですが、それでも燃料資源との競合もありますし、埋蔵量的にも100年は持ちません。
こうして、石油が希少化、枯渇すれば、それに連動して、医療、衛生レベルも下がる可能性が大きいので、全世界的に高齢化に急激なブレーキがかかり、人類の平均寿命も短縮する可能性大です。将来人口推計はその点は全く視野に入っていませんかから、日本だけでなく、世界的に「人生60年」時代に逆戻りして、世界人口もどこかの時点で急降下することもあり得ます。
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