いじめ、紅衛兵、内務班
弊ブログ記事「日本の若者における自尊感情」に2点コメントをいだだきました。
1)https://renqing.cocolog-nifty.com/bookjunkie/2022/09/post-abec1c.html
2)https://renqing.cocolog-nifty.com/bookjunkie/2022/09/post-588573.html
その文言中の、「意図的にいじめ被害者を辱める」から、文革時代の紅衛兵「吊し上げ」を連想しまして、そういえば、旧帝国陸軍の内務班教育も、より程度のひどい「いじめ」ではなかったか、と気付きました。内務班については、小学館日本大百科全書と国史大辞典の項目記事を挙げておきます。
「内務班」小学館日本大百科全書
旧日本陸軍における兵営内の起居の単位。中隊ごとに下士官を班長として編制され、戦時編制の下では小隊となる。普通、20~30人の兵士が集団生活を行った。たてまえのうえでは、「死生苦楽ヲ共ニスル軍人ノ家庭」などとされていたが、実際には、「私的制裁」という名の、下士官や古参兵による無法な暴力が横行し、暴力と厳格な規律とを通じて兵士を軍隊内秩序に強制的に同化させる場となっていた。
[吉田 裕]「内務班」国史大辞典
第二次世界大戦前の日本陸軍における兵営生活の単位。陸軍では訓練や演習を除き兵営内の日常生活の起居動作のことを内務と称した。平時には軍隊の最小単位は中隊であったが、中隊はさらに兵舎内の兵士の居室ごとに五ないし六の内務班に分かれ、営内居住の下士官を内務班長とし、場合によってはさらに内務班付の下士官をおいた。内務の規則書として作られた『軍隊内務書』によると、内務班長の任務は「兵卒ヲ愛護シ、兵卒間ノ和親ヲハカリ、諸種ノ規定及上官ノ命令意図ヲ班員ニ伝達告示セシメ、且中隊長ノ旨ヲ奉シテ自ラ儀表トナリ班員ヲ指導シ確実ニ内務ヲ実施セシメル」ことであった。しかし実際の内務班生活は、起床から就床まで食事、清掃、洗濯、兵器の手入れなど一分の隙もないきびしい規則と慣行が強制され、兵士にとって盲目的服従が慣性となるまでに訓練する場所であった。内務班内において古年次兵が初年兵を私的制裁によって苦しめることも一般的であった。このため軍隊家庭主義がとなえられ、軍隊内の上下関係は親子関係、兵士相互間の関係は兄弟関係であることが強調されたり、私的制裁の禁止がくり返し通達されたりしたが、内務生活が兵士とくに初年兵にとって堪えがたい苦痛であることは変わらず、自殺者・脱走者が絶えなかった。→軍隊内務書(ぐんたいないむしょ)
(藤原 彰)
※本記事におけるブログ主コメント欄の出典につき、リンクを以下に貼っておきます。
尾身茂氏のロング・インタビュー「コロナと戦った三人の総理」『文藝春秋』令和4年11月号
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コメント
遍照飛龍 さま
>ただこの「指導者が責任を取らない社会」ってことの問題点を、日本の知識人が言っているような気がしないし、その根源に戦後は「天皇」があるのを左翼がどれだけ言っているのか、寡聞なのでわかりません。
少なくとも、「誰が戦争を起こしたのか」という「戦争責任」は、戦後、間欠的に吹き出してはいますが、「なぜ、勝つ、と言っていた戦争に負けたのか」という「敗戦に対する説明責任」を問う声は、皆無だったのではないか、と思います。「皇国」の二千年間の歴史に皆無の大失態、「敗戦」の責任を統治者の誰もとらなくて済むのですから、旧臣民、新憲法下の国民の誰も、起きてしまった負の事柄の責任を取るようになる道理がありません。それは現在でも継続中なのは、コロナ対策の専門家会議の責任者、尾身茂氏の下記の発言にも明らかです。
「新型コロナ対策の最大の教訓は、最終判断は総理がするものですが、専門家の意見を聞いた上で判断すること。そして判断をしたら、なぜそのように判断したのかを必ず総理が自分で国民に説明することの大切さです。これが意思決定のルール化の肝だと私は痛感しています。政治家がリスクを負って判断し、国民とのコミュニケーションをしないかぎり、政治主導という意思決定の文化は完成しません」
尾身茂氏のロング・インタビュー「コロナと戦った三人の総理」 『文藝春秋』令和4年11月号
私の父方の祖母たちは、南洋のテニアン島で米軍の火炎放射器によって焼き殺されましたが、その責任を当時の日本の統治者たちの誰にも取ってもらっていません。私が死ぬまで、このことは忘れませんし、言い続けたいと思っています。
投稿: renqing | 2022年10月 9日 (日) 02時30分
返信ありがとうございます。
>朝鮮戦争の勃発が決定的な引き金になり、明治憲法体制の統治者たち(裕仁天皇、国軍、高級官僚etc)の「敗戦責任」を問うことは、以後、その機会は失われてしまいました。このことは、戦後日本人の倫理観に決定的な歪をもたらしたと思います。その一つの病的な発現が、先進国中の最大の自殺者率ですし、学校の「いじめ」なのだろうと思います
その通りです。
私は学も無いですが、「為政者・指導者が責任を取らない」ことが、如何に恐ろしいか。。中高生の頃からやたら兵書を読みまくってましたが、それで「天皇」と今の社会の「異常さ・危なさ」に気が付きました。
なんせ、いくらちゃんとした法やその体系でも最後は「有耶無耶に誤魔化す」ってのが国家のシステムで出来上がって{上官の命令責任が無い・組織罰が存在しない}、
「弱いものに擦り付けて、肝心の実行犯は無罪でなんら問題が解決も是正もされない」
のですから、70年も良く日本が続いたとさえいえると思えます・・・・
が福一の放射能の放置{原発屋とそれと良好の関係の天皇家の謀議}で1000年以上続く日本の命脈も終わるな気がします。
まあ極端な主張を述べてすいませんが、そう心配します。
ただこの「指導者が責任を取らない社会」ってことの問題点を、日本の知識人が言っているような気がしないし、その根源に戦後は「天皇」があるのを左翼がどれだけ言っているのか、寡聞なのでわかりません。
投稿: 遍照飛龍 | 2022年10月 4日 (火) 21時23分
遍照飛龍 さま
>それが「天皇に責任が無い」で全否定されることなく温存されたのが、「戦後日本」だったのでしょうね・・。
1945年の敗戦以降における最大の禍根は、国民にかなり強く存在した、「裕仁天皇の退位」論をGHQが間接統治のご都合で残したことです。そのうえ、天皇に「敗戦責任」をとられると、自分達も責任を取らされることが必至な、戦前からの権力サークルの亡者どもがGHQのの尻馬に乗り、GHQとグルとなって、「裕仁天皇の退位」論をうやむやのうちに、葬り去ったのでした。
朝鮮戦争の勃発が決定的な引き金になり、明治憲法体制の統治者たち(裕仁天皇、国軍、高級官僚etc)の「敗戦責任」を問うことは、以後、その機会は失われてしまいました。このことは、戦後日本人の倫理観に決定的な歪をもたらしたと思います。その一つの病的な発現が、先進国中の最大の自殺者率ですし、学校の「いじめ」なのだろうと思います。
投稿: renqing | 2022年10月 2日 (日) 04時57分
ある修験の行者さんが
「兵役は、いじめの陰湿なやり方を覚える」
「徴兵制が非効率かつ結果的に国力を削ぐことは、韓国が証明してくれている。
徴兵制を導入すれば強い軍隊を作れるというのは妄想。
かつてこの国でも「仕事をようやく覚えた若者」を兵役に取られて中小の会社や商店は大変だったんだよ。」
https://twitter.com/anchorworks1971/status/1573616483804250114
とかツイートされました。
まあ今の日本は、その「市場経済での足枷をつけた韓国に経済的に劣る運営をしている」悲惨な状態・・。
戦後復員した人たちでも、多くの人が精神的に変になった人も多かったとか。
私の祖父もかなり変わったらしいし。それでも優しい人だったけど・・・
フリーアナウンサーの桑原征平さんの父も軍隊でかなり壊れて戦後は異常な家庭内暴力を振るいまくっていたとか・・
旧軍で精神科に兵役中で入院・戦地から入院した人の多くが「戦闘での恐怖・ストレス」よりも、「上官や同僚の虐待・いじめ」で入院したのが、一番多かったとか。
それが「天皇に責任が無い」で全否定されることなく温存されたのが、「戦後日本」だったのでしょうね・・。
投稿: 遍照飛龍 | 2022年9月30日 (金) 19時53分