高1数Aの使い道(新型コロナ感染症へのアプローチ)/Consider COVID‑19 using high school mathematics(2)
前回の記事、
高1数Aの使い道(新型コロナ感染症へのアプローチ)/Consider COVID‑19 using high school mathematics(1): 本に溺れたい
に、ご質問を受けました。下記です。
Q.「《偽陽性》が問題なら、そもそも、問題文の中の〈ある病原菌の検査試薬は、・・・、感染していないのに誤って陽性と判断する確率が2%である。〉の部分が、《偽陽性》の確率なのでは?」
このお尋ねに対する私の回答は以下です。
A.「ご指摘の問題文が意味しているのは、この(仮に呼ぶとして)X検査法のエラー率です。つまり、X検査法の性能評価に相当します。
この問題に限定すれば、《偽陽性》とは、X検査法後に、「陽性」と判定された、目の前にいる個人が、じつは「陰性」である確率です。
それを算出するには、X検査法以外で調査された、この個人の属する母集団の客観的な感染率が必要です。この問題の設定では、母集団の感染率1%になっていますが、もしその感染率が10%なら、この〔陽性〕人物の《偽陽性》の確率は低くなります。逆に、この母集団の客観的感染率が1%を下回るなら、この人物の《偽陽性》の確率は高くなります。」
ということで、問題文中の〈全体の感染率〉を〈1%〉から〈10%〉に引き上げ、残りの条件は不変にして、X検査法後に「陽性」と判定されてしまった個体(個人)の、「実際には病原菌に感染していない確率」としての《偽陽性率》を以下に再計算してみることにしました。
※下記の途中式の第1行目にタイプミスがありましたので訂正します。〈+〉記号のところを、〈÷〉としていました。20221008
問題の設定のうち、全体の感染率だけを1%から10%にしたところ、この検査で「陽性」判定された個体の《偽陽性率》は、
約66.7% から 約15.4%
に大幅に低下します。言うなれば、この問題におけるX検査法は、大流行しているとき/地域ではそこそこ信頼できるが、流行が終息してきたとき/地域では、まったくあてにならない、という評価になりそうです。
ここで話題に出した、「条件付き確率」は、実は、近年の向上著しい、天気予報や機械翻訳で活用されている AI の Deep Learning 法とも関連します。「ベイズ推定」がそれです。
※参照 西垣通『ビッグデータと人工知能』2016年中公新書、pp.76~83「深層学習とは何か」
ネットから生み出されるビッグデータが、ますます活用される時代になっていますので、統計・確率の分野への理解の有無は、AI時代の市民リテラシーとなります。毛嫌いして、データ分析の専門家群に丸投げしていると、自分たちの首を絞めかねません。自戒とします。
※本ブログの別記事におけるブログ主コメント欄の出典につき、リンクを以下に貼っておきます。
尾身茂氏のロング・インタビュー「コロナと戦った三人の総理」『文藝春秋』令和4年11月号
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