「後期高齢化」社会の現実
日本列島では、2022年9月現在で、人口年齢構成は以下のようになっています。
総人口:1億2500万人
15歳未満:1500万人(12%、総人口比)
15歳以上64歳以下:7400万人(59%)=生産年齢人口
65歳以上:3600万人(29%)
〔うち、75歳以上:1900万人(16%)=後期高齢者〕
現在64歳の方たちは、来年には高齢者にカウントされてしまいます。しかし、実感的に、日常生活で他者のサポートがないと生活が多少とも難しくなる、ということは、周辺の64歳の方をみても、街中の様子をみても、この年齢層ではそれほど深刻ではなさそうです。従いまして、他者のケアを多少とも必要とするのは、いわゆる後期高齢者(75歳以上)です。65歳から75歳の人口層(1700万人)は、他者のサポートなしで十分日常生活を送れるし、働こうと思えばぎりぎり働ける、という人口集団ということになりそうですね。
すると、他者のケアが必須なのは、
子ども+後期高齢者=12% + 16%=28%
となります。つまり、
10人中、3人(子ども1人、老人2人)を、残り7人
でケアする計算となります。
ざっと案分しますと、
3世帯あれば、1世帯が子ども1人を、2世帯が1人づつ老人
をケアしている勘定です。
この感触は、現代日本の実情をかなりリアルに反映していそうです。そして、この比重(負担シェアリング)において、子どもケアが減り続け、老人ケアが増え続けることは、自由落下の物理法則同様、間違いありません。
考えてみれば、これはなかなか大変なことのような気がします。日本人は、今後ますます、「仕事」ではなく「老人ケア」に日常生活時間の一部を割かなければならないことを意味するからです。
現在元気な64歳の方々も、10年後には、ケアされる側にカテゴライズされてしまうことは、ほぼまちがいありません。
これは、21世紀日本人は、今から相当の危機感と覚悟をもって、政治的な、叡智と行動を始めていかないと、結構大変な、取り返しのつかない事態になりそうです。おおこわ。
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