動物に心はあるか?/Do animals have minds or hearts?
「このネコの名前はエド。スフィンクスと呼ばれる種類で、好奇心が強く、社交的で、愛情深く、人の感情に敏感に反応する。名前を呼べば喉を鳴らす。前に傾いた耳はこちらに注意を向けていること、細くなった瞳孔はリラックスしたことを示す。(PHOTOGRAPH BY VINCENT LAGRANGE)」
ナショナルジオグラフィック日本版サイト/特集ギャラリー:動物たちの心 写真14点
ナショナルジオグラフィック日本版(2022年10月号)
上記の写真を見て、その双眸から眼を離すことができなくなってしまうのは、私だけではないでしょう。ナショナルジオグラフィック日本版(2022年10月号)の表紙です。私は一目で心を奪われてこの号を購入してしまいました。
続編の(2)を up しました。今度は、鳥(シジュウカラ)の言葉とジェスチャーの研究紹介です。
この特集記事によりますと、つい最近まで、「動物の心」の研究というと、「擬人化」「擬人的」といった、懐疑的な眼を科学者仲間からさえ向けられたと言います。しかし、近年、多様な手法によって研究が蓄積され、自然界における調査も積み上がり、「動物の心」の存在に関して、簡単には否定できなくなりつつあるようです。
私が印象深かったのは、カナリア諸島近海で、死んだ子を連れて泳ぐゴンドウクジラの水中写真(雑誌版pp.50-1)です。このゴンドウクジラにおいては、子クジラの体は、「生きもの」から「モノ」に変わったのではなく、それは、亡骸(なきがら)、少なくとも、「死んだ子」となっていて、「モノ」以上の意味/価値を持っているのだろう、と推定できます。つまり、「死」という事柄を、「生」とは明らかに異なり、しかしそれは「モノ」でもない、と認識している訳です。むしろ葬送、哀悼、に近いような気さえします。
また、このナショジオの記事に登場する研究者は、全部で17人いますが、そのうち8人(47%)が女性研究者、というところも、男性に比べ、相対的に女性のほうが他者に対する「共感力」が高いと思われることの反映か、とも思ったりします。印象的な例では、ノーベル賞自然科学部門の女性受賞者比率は3.8%ですし、フィールズ賞(数学)は、2.3%(87人中2人)ですから、「動物の心」研究者人口の女性比率は、結構な高率かも知れません。
※本記事冒頭の、エド君の画像を含む、ナショナルジオグラフィック日本版サイトの関連写真は、特集ギャラリー:動物たちの心 写真14点(2022年10月号)を参照してください。
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