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2024年4月28日 (日)

動物に心はあるか?(2)/Do animals have minds or hearts?(2)

前回の記事、
動物に心はあるか?/Do animals have minds or hearts?: 本に溺れたい
の続報です。

知人のSNSからご教示いただきました。

週刊SPA! 2024 4/23・30合併号(扶桑社刊)p.92-5 インタビュー記事「エッジな人々」
「鳥の言葉がわかる男 鈴木俊貴」

以下、その記事からの(極めて興味深い)抜粋
 ※註 Answer「」内が Dr.鈴木俊貴の回答

1.動物とひとの会話可能性について

Q.(雑誌記者からの質問)動物と人間の会話可能性は?
A.「大切なのは、『翻訳と会話は違う』と理解することです。・・・、知性が違えば、ものの考え方も違う。・・・すべての言葉を翻訳することは無理です。」

Q.会話はできない?
A.「いや、場を共有すれば、意思疎通できます。《ペットの気持ちは理解できるし、互いに感情の変化もわかる/引用者による要約》 ただ、実は人間以外のほぼすべての動物がすでにそれを実践しているんですよ。たとえば、同じ森にすむヤマガラの鳴き声の内容がシジュウカラには理解できるし、リスもシジュウカラの言葉がわかりますから。」

Q.種を超えた会話?
A.「昔は、人間も動物の言葉を理解していたはず。でも、いつの間にか我々が動物たちの言葉に耳を傾けなくなってしまった。これが問題なんです。もし、我々がその世界を取り戻せれば、本当の意味での自然と人間の共生が生まれるはずです。今後、動物言語学が、その共生を深める動きの一端を担えたらと思います。」

2.コミュニケーションの本質:言語vs.非言語

A.「・・・、コミュニケーションにおいて本当に大切なのは非言語です。・・・。《人間の誕生から700万年のうち》99%の期間、人間は言葉なしで社会を発展させてきました。非言語コミュニケーションとは、簡単に言えば、場を共有し、相手を観察し、共感し、意思疎通をすること。これができれば、本来は言語で情報を補う必要はないはずなんですよ。」

Q.現代人はコミュニケーションがオンラインに偏り、場の共有が少ない?
A.「そうなんです。人間は、あまりにも言葉で情報を伝え合うことに慣れてしまった。僕が危惧するのは、言葉だけの認識はお互いに齟齬が起きやすいという点です。・・・。非言語が欠けた情報に、齟齬やストレスを感じるに人が増えているのでは、と。」

3.AIへの危惧

A.「いま一番の懸念しているのは、AIの存在です。AIは人間の認識の枠組みの中で世の事象を分類することで成り立っています。そこには動物や自然の視点が欠けています。また、人間がまだ誰も発見していない知識はAIには理解できないので、AIに動物を言葉を理解させるのは100%無理です。AIは便利ですが、頼りすぎれば、世界の真理を追究する自然科学の進歩を遅らせてしまう。その状況を避けるには、人間の視点以外から見た世界を多くの人が知ることが大切だと思います。」

4.動物の視点を持つことの意義

A.「『人間が最も賢い』とする人間至上主義は本当に愚かなものだと考えるようになりました。・・・。《研究者にも、何事も人間の立場で動物を理解しようとする人が多い》 でも、動物の世界に入って観察を続けてみると、人間に勝る能力を持つ動物はたくさんいるし、『決して人間だけが優れているわけではない』とよくわかります。その能力が、僕らの尺度では理解できないだけなんです。
〔上記、彩色フォントは引用者による〕

上記のダイジェストだけでも、如何に興味深いインタビュー記事かご理解いただけたと思います。是非、元の雑誌記事を、図書館なりでお読みください。

最後に。
Dr.鈴木俊貴の最新の研究結果(鳥のジェスチャーについて)がネットから知ることができます。下記です。その英語論文のタイトルには、「 ‘after you’ 」(お先にどうぞ)とあります。この先生、ユーモアのセンスもお持ちのようですね。素晴らしい。

シジュウカラはジェスチャーを使う―翼をパタパタ「お先にどうぞ」― | 東京大学 先端科学技術研究センター

 

この Dr.鈴木俊貴の研究は、中1国語の教科書にも掲載されています。

【中1】「言葉」をもつ鳥、シジュウカラ【音読】国語 教科書 - YouTube

ご本人による解説もどうぞ。

【鳥も文法で会話】「20個以上の単語を使い…」シジュウカラの言葉を解明!動物言語学者に迫る|アベヒル- YouTube



※ブログ主からの追記
下記の弊ブログの過去記事からも一部引用させて頂きます。参照頂ければ幸甚。

人は言葉の外に出られない(1): 本に溺れたい より

 蛾やハエは、航空工学も流体力学も知らないが、立派に空を飛び、あるいはホバリングしている。蛾やハエの世界認識は、その身体上の特徴に現われている。同じ空中を飛ぶにも蛾とハエではその原理を大きく異にしているだろう。そもそも、21世紀の現代でさえも飛翔動物の飛行原理についてよくわかっていないのだ。つまり、我々人間にとって数理科学的に解析できていない原理を蛾やハエは楽々と実現している。そして、彼らは数学を必要としていない。下記参照。

「蛾やハエが空中で静止したり、急旋回したりするのはなぜなのか。どんな優れた安定性制御システムを備えた飛行機でも一旦
失速すると直ちに墜落してしまうが、昆虫が突風の中を悠々と飛び抜けて決して墜ちないのはなぜなのか。我々は、空気力学のさまざま理論を蓄積し、ジャンボジェット機やステルス戦闘機を、統一された「定常理論」に基づいて設計できるようになった。だが毎秒20~600回も羽ばたく昆虫の羽がなぜ自重の2倍も以上の揚力を発生できるかについては、いまだに多くの疑問が残っており、理路整然と説明できる理論がないと言っても過言ではない。」
劉 浩「生物飛行のシミュレーションと小型飛翔体」日本流体力学会数値流体力学部門Web会誌 第12巻 第3号 2005年1月

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