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2025年2月28日 (金)

李朝朝鮮において徳川日本より長く《奴婢制=奴隷制》が維持されたのはなぜか?

塩沢由典先生から、弊記事コメント欄「二千年前の奴隷解放令/ The Emancipation Proclamation of 2,000 years ago: 本に溺れたい」に問題発見的な質問を頂きました。私も質問内容に不案内のため俄かには答えられませんでした。そこで、DeepSeekに尋ねてみました。

Q.「奴婢の制度は中国にも韓国・日本にもあったことは確かでしょうが、日本からは比較的早くに(少なくとも公的には)なくなったのに対し、韓国(朝鮮時代)には長く残ったのはなぜでしょうか。江戸時代にも、奴隷制とあまり差異のない人身売買はあったのでしょう。それでも、幕府の建前としては、無期の奉公は認めず、遊女などにもかならず年季をつけるようにしていたと聞きます。建前上とはいえ、韓国と日本とではかなりの違いが生まれていたとおもわれますが、この違いを理解する何かてかがりがありますか。」

 

DeepSeek's answer(20250228)

### 1. **事実確認**
- 日本と朝鮮半島における奴婢制度の歴史的相違は史実といえます。朝鮮半島(特に朝鮮時代)では、奴婢制度が19世紀後半の開化期まで公式に存続していました。一方、日本では中世から近世にかけて、奴婢制度は形を変え、江戸時代には公的には廃止されました(ただし、人身売買や年季奉公などの形で実質的な奴隷制に近い状態は残っていました)。

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### 2. **朝鮮半島で奴婢制度が長く残った原因**
- 以下に、朝鮮半島で奴婢制度が長く存続した理由をいくつか挙げます。

#### (1)**社会構造の違い**
- **朝鮮**:朝鮮時代の社会は厳格な身分制度(両班・中人・常民・賎民)に基づいており、奴婢は最下層の身分として固定されていました。この身分制度は儒教的価値観に支えられており、容易に変革されませんでした。
- **日本**:日本の江戸時代も士農工商という身分制度がありましたが、朝鮮ほど厳格ではなく、特に経済の発展に伴って身分間の流動性が高まりました。また、日本では中世以降、武士階級が台頭し、奴婢制度に代わって年季奉公や契約労働が主流となりました。

#### (2)**経済的要因**
- **朝鮮**:朝鮮時代の経済は農業中心で、奴婢は両班(貴族階級)の土地で労働力として不可欠でした。奴婢を解放すると、両班の経済基盤が崩れるため、制度が維持されました。
- **日本**:江戸時代には商業や都市化が進み、労働力の需要が多様化しました。年季奉公や契約労働が主流となり、奴婢制度に依存する必要性が低くなりました。

#### (3)**政治的・文化的要因**
- **朝鮮**:朝鮮王朝は儒教を国教とし、身分制度を重視する保守的な体制を維持しました。奴婢制度はこの体制の一部として長く存続しました。
- **日本**:江戸幕府は儒教の影響を受けつつも、実用的な政策を重視し、社会の安定を図るために身分制度を柔軟に運用しました。また、キリスト教の影響や国際的な圧力もあり、奴隷制に近い制度を公的に認めることが難しくなりました。

#### (4)**国際環境の違い**
- **朝鮮**:朝鮮は鎖国政策をとり、外部からの影響を最小限に抑えていました。そのため、欧米諸国からの奴隷制廃止の圧力がほとんどなく、制度が維持されました。
- **日本**:江戸時代後期には欧米諸国との接触が増え、国際的な圧力が高まりました。特に明治維新後、近代国家としての体裁を整えるために、奴隷制に近い制度を廃止する必要がありました。

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### 3. **歴史的経緯**
- **朝鮮半島**:朝鮮時代の奴婢制度は、高麗時代から続く伝統的な身分制度に根ざしていました。1894年の甲午改革(甲午更張)でようやく奴婢制度が廃止されましたが、これは日本の影響や開化派の改革によるものでした。
- **日本**:中世以降、奴婢制度は形を変え、江戸時代には年季奉公や契約労働が主流となりました。明治維新後、1872年の「解放令」で公的な人身売買が禁止され、奴婢制度に近い状態も解消されました。

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### 4. **結論**
- 朝鮮半島で奴婢制度が長く残ったのは、厳格な身分制度、儒教的な保守体制、農業中心の経済構造、そして国際的な孤立が主な原因です。一方、日本では経済の多様化や国際的な圧力、社会の柔軟性によって、奴婢制度に近い状態が早くに解消されました。この違いは、両国の歴史的・文化的背景を反映しています。


※参照 弊ブログ記事
下人価格論: 本に溺れたい

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コメント

奴隷制・人身売買を「年季奉公」まで、変えてほぼ「奴隷制」を無くした、豊臣政権や家康と江戸幕府は、もう少しその辺は評価されてほしいです。

明治維新で「奴隷など、太閤さん江戸幕府にはすでになかった」ってことを宣伝しなくなった。
ので、その辺の人道上の「偉業」を日本人って忘れがちです。。

制度としての「奴隷制」は消えても、「ブラック労働」で、奴隷のように使いつぶされて死んでしまう日本人。。


言いすぎでしょうが「太閤・神君らの努力で奴隷制が消えた」って知識もないのが、「会社員て奴隷」を甘受する一因かな・・・だから「人間としてそこまで侮辱され酷使されるのは耐えれない」ってならないのかな・・。

て「サラリーマンは化け物」」って故水木しげる氏。
同感です。。

制度としての「奴隷制」は早くに消えても、制度ではない「奴隷」は明治以降に完全に復活して日本人を奴隷化している気もします。
って根拠が薄弱な感想ですけど。

投稿: 遍照飛龍 | 2025年2月28日 (金) 12時05分

DeepSeek、なかなかのものです。大学の先生が課題問題を出しても、解答を評価するのが、ますますむずかしくなりますね。

回答の大半は妥当なものと思います。ただ、
2)**経済的要因**
3) **政治的・文化的要因**
4) **国際環境**
は、それぞれもう少し掘り下げて考えてみる可能性もありそうです。

経済的要因の基盤は農業でしょう。同じ稲作・水田耕作が基本だったのですが、ひょっとしたら日朝で、規模に違いがあるのかもしれません。日本では戦国時代以降、いわゆる小農自立が進みます。朝鮮には、そういう基盤がなく、大規模農業(ヨーロッパの大規模農業と違い数ヘクタール規模のもの)でないとやっていけなかったのかもしれません。もし小農自立が容易に行えるのだとすると、奴隷の逃散に対応するのがむずかし良などの問題が出てきます。

3) 政治的・文化的要因、4) 国際環境も、中華帝国からどのくらい独立できていたかが大きな要因で、「欧米諸国からの奴隷制廃止の圧力」云々は、現在の常識からの憶測のような気がします。日本が奴隷制から比較的早く離れだのは、「欧米諸国からの圧力」ではなく、自律的な変容だったのではないでしょうか。

投稿: 塩沢由典 | 2025年2月28日 (金) 03時15分

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