『天幕のジャードゥーガル』(2022年~)トマトスープ 著
◆内容紹介
日本の漫画作品です。著者はトマトスープ。2025年6月現在、書籍版で第5巻まで刊行。Webマンガサイト『天幕のジャードゥーガル』トマトスープ | Souffle(スーフル)(手続き・登録不要で閲覧可)にて連載中です。
ヒロインは、中世ペルシア(13世紀)の学芸都市トゥース(Tūs)の奴隷の少女。彼女は、後にファーティマと名乗り、時の世界帝国モンゴルの後宮において、皇后側近として宮廷政治に活躍(暗躍?)する実在の人物です。歴史書中での名は、ファーティマ・ハトゥン(Fāṭima khātūn)。
舞台は、13世紀のイラン東部の学芸都市トゥースから始まります。ここで、奴隷の少女シタラは、学者一家に買われます。まだ幼いシタラは反発しながらも、「知識」が生きるための武器となることを主人一家から諭されます。そして、古代のギリシア、ペルシア、インドのハイブリッドである、イスラーム黄金時代(8世紀から13世紀)の中世ペルシアの学術を、「門前の小僧」ならぬ、学者一家の家内奴隷として、8年間、クルアーン(コーラン)読誦の傍ら、教授されます。それは、例えばユークリッドの幾何学原論であり、プレトマイオスの天文学だったり、イブン・シーナー(アビケンナ)の『医学典範』、などです。
そこに、モンゴル帝国軍が侵攻し、リケジョ(理系女子)奴隷シタラは、戦利品の戦争奴隷として、地球の裏側のモンゴル高原まで連れ去られ、過酷で数奇な運命の激流に彼女は投げ込まれることになります。
◆読後感
本作品はまだ完結していませんし、しばらく完結しそうもありませんが、歴史漫画として、2020年代を代表する傑作になると思います。それも、21世紀の歴史学の潮流である、global history をエンターテイメントとして具体化し得た傑作としてです。1年で1巻の刊行ペースなので、読者としては、とてもヤキモキしますが、歴史に題材をとる緻密なストーリーを考慮しますと、仕方ないかも知れません。電子版、紙版ともにありますが、私は紙版を読了致しました。
タイトルの《ジャードゥーガル》の謎解きに関しては、天幕のジャードゥーガル - Wikipedia 様をご参照ください。
◆各巻への著者緒言
各巻のジャケット・フラップに著者トマトスープ氏から一言が掲載されていますので、ご紹介しておきます。
天幕のジャードゥーガル 1
「天幕のジャードゥーガル」をお手に取っていただき、ありがとうございます。
モンゴル帝国は、同時代の他の地域よりも比較的女性の地位が高く、歴史にも名前や事象を残した人物が結構います。
ファーティマもその一人。
彼女の人生を借りて、女性たちから見たモンゴル帝国を描くことが、本作の試みです。
最後までお付き合いいただけるよう、努めて参ります。
天幕のジャードゥーガル 2
1巻にはたくさんの反応をいただきまして、ありがとうございました。お陰様で、何年も前から温めてきた物語を描くことができています。
2巻では登場人物も増え、ストーリーも歴史に沿って展開していきます。大きな流れの中にある、一人ひとりの小さな瞬間に、目を向けていただければ幸いです。
天幕のジャードゥーガル 3
歴史上のできごとを確認する時、地図を見ながらだとおもしろいです。最近は立体的に地形を見られるソフトがあるので、人間の行動が地形や環境に影響を受けていることがよりリアルに想像できるようになりました。ただし・・・山や川って結構頻繁に動くんですね。最近知ってびっくりしました。
3巻も地図を片手に描きました。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
天幕のジャードゥーガル 4
モンゴル人の名前は本によって表記揺れが激しいのですが、最近はよりオリジナルの発音に近い表記が採用されている傾向にあると思います。
「オゴタイ」も本当は「オゴデイ」や「ウゲデイ」の方が正しいと思うのですが、この漫画では文字数が少なかったり、読みやすいかなと思う表記を採用しました。でも「オゴタイ」表記はちょっと古かったかもしれませんね。
彼の名前は「賢い人」という意味だとする古い解釈もありますが、「上昇」を意味する名前だという方が根拠がしっかりしているようです。
天幕のジャードゥーガル 5
本作をアニメ化していただけることになりました。
制作を担うアニメスタジオのサイエンスSARUさんは、私の好きなアニメ作品をたくさん手掛けてきたスタジオで、まさか自分の漫画がそこに加わる日が来るなんて夢のようです。
大好きなアニメスタジオから大好きな歴史のアニメが作られるってすごすぎる。
音や色や動きのついた『天幕のジャードゥーガル』を皆さんも楽しみにしていてください!
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