Smith, Adam

2022年12月17日 (土)

価格を決定するものは、「需要」ではなく、「費用」である(2)/ What determines price is not "demand" but "cost" (2)

 前回 の補遺のようなものを書きます。

 前回触れた、塩沢由典の「最小価格定理」に関しては、以下の論文も啓発的で、この定理についての理解を深めてくれます。

1)塩沢由典「生産性、技術変化、実質賃金」『季刊 経済理論』vol.56,no.3, 2019年/10月

上記の論文は、下記、J-STAGEサイトからPDFファイルとしてDLできます。

https://doi.org/10.20667/peq.56.3_7

 SMTの理論的帰結を、かなり簡潔に具体的データを利用して説明したものです。とりわけ「最小価格定理」から実際の経済問題を分析するとどのようなことが言えるかを語っていて、この定理の重要性、切れ味がよくわかります。途中、ベクトルや行列の計算式がありますが、躊躇せず、最後まで読むことをお勧めします。

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2022年5月 2日 (月)

"Exoteric or Esoteric Buddhism" on the Principle of Self-Help

 In the early modern era (1618-1648), the "Thirty Years' War," also known as World War zero, burned the central part of the European continent to the ground, and finally the authority of the Holy Roman Emperor and the Pope fell to the ground. The "Treaty of Westphalia" system was established, under which the various "Sovereign States" of various sizes were lined up against each other. After this, there was no longer any (real legal) authority over the sovereign states. Consistently since then, until the present day, in the 21st century, the modern world has become an arena of power politics (the weak and the strong), where the great powers take the lead and join forces.

※cf. Collapse of Social Order and Salvation of the Individual: 本に溺れたい

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「自力救済の原理 the principle of self-help」を巡る顕教と密教

 初期近代(1618-1648)、ヨーロッパ大陸中央部をその業火で焼き払った第0次世界大戦とも呼ばれる「三十年戦争」がありました。その歴史的帰結として、ヨーロッパ大陸におきましては、神聖ローマ皇帝とローマ教皇の権威は地に堕ち、大小さまざまな「主権国家」が並び立つ「ウェストファリア条約」体制に移行しました。これ以降、西欧世界において、主権国家の上に立つ(実定法的)権威は消失し、21世紀の現代まで、近代世界は大国主導で合従連衡が行われる、権力政治(弱肉強食)のアリーナと化しています。

参照 社会秩序の崩壊と個人の救済: 本に溺れたい

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2012年12月31日 (月)

佐伯啓思 vs. 猪木武徳

最近、現在の経済学を巡る問題を論じた新書が二冊相次いで出版された。一つは佐伯啓思氏(京大教授)の手になるもの。もう一つは猪木武徳氏(国際日本文化研究センター、阪大名誉教授)のものである。

そこで試しに二著の目次の対照表を作成してみる。

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2010年5月15日 (土)

マーシャルのスミス批判 Alfred Marshall's criticism of Adam Smith

Alfred Marshall, Industry and Trade, 3rd ed., 1920

Appendix D: The English Mercantilists and Adam Smith (p.451)

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2009年9月22日 (火)

幕末期の「神の見えざる手」論/ The "Invisible Hand of God" theory of the last days of the Tokugawa Shogunate

大国隆正は、「西洋学者のいふをきくに、西洋にてもはら天主教も、通商のこともともに、如徳亜よりおこりて、アメリカ州まで及びたるものなりとぞ。天主教は友愛を宗とす」(『古伝通解』巻三、『大国隆正全集』巻六、159-60頁)と説いているが、大国の場合、利己心は正志斎のように全否定されることはなく、生産・商売をうながすものと肯定され、しかも、利己心は競争をもたらすものではなく、百姓・商人・職人のそれぞれの利己心の発動は、意図せざる結果として、お互いが「あひたすけ・あひすくふ」となり、それが「神の智慧」であるとされる(『死後安心録』、全集五、320-21頁)。そして、キリスト教の「友愛」はまさにその「あひたすけ・あひすくふ」ことを目指しているものとしてとらえられている。
前田勉『江戸後期の思想空間』ぺりかん社(2009)、p.365、注17

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2007年11月28日 (水)

Adam Smith による社会契約論批判 (Counter-revolution to the Social Contract Theory)

 以下、下記からの引用。

 大道安次郎「近代自然法」、新版 社会思想史辞典 新明正道編著 創元社(1961年)
、pp.116-117

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2007年11月17日 (土)

ヒューム=ハイエク保守主義の理論的欠陥(2)/ Theoretical flaws of Hume-Hayek conservatism (2)

 前回は、いくらか話を急いでしまった。ここで議論を整理しよう。

 Hume→Hayek と流れる保守主義理論とは、私見では以下のようにまとめられる。

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2005年12月30日 (金)

「人間社会の自然論」Naturlehre der menschlichen Gesellschaft(改訂2006/2/12)

 この表題の件は、社会学史上のペダンティックな論点に収まらない、意外に深刻な意義を有している。

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