複雑系(complex system)

2024年10月20日 (日)

柳田国男「實驗の史學」昭和十年十二月、日本民俗學研究/ Yanagida Kunio, Experimental historiography, 1935

 過日、年中行事ともいうべき、ノーベル賞の報道がありました。今年こそは、日本人受賞者がいるか、という、ま、オリンピックの金メダルの数を競うのと同じ、ナショナリズム的競争心の然らしむところなのでしょう。一方で、ノーベル「経済学」賞と通称されるものもあります。正式名称は、「アルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン国立銀行賞」といいまして、自然科学のノーベル賞とは全く別物ですし、この賞のおかげで、「経済学」が物理学なみの「科学性」を獲得したのか?、といえば勿論そうではないでしょう。

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2024年10月14日 (月)

プログラム解明科学とSMT理論/Program-Elucidation Science and SMT Theory

プログラム解明科学とは、故吉田民人が提唱しているものです。従来の、物理学を第一モデルとする自然科学は、自然界に内在する「法則による秩序」を探求する「法則定立科学」であり、人間社会に内在する「規則による秩序」を探求する社会科学は、「プログラム解明科学」と呼ぼう、というアイデアです。

一方、SMT理論とは、
Yoshinori Shiozawa, Masashi Morioka, Kazuhisa Taniguchi
Microfoundations of Evolutionary Economics
Springer; 1st ed. (2019/7/10) , 364 pages, ISBN-10 : 4431552669

によって、全世界に向けて発表された、新古典派経済学を代替する、経済学の基礎理論です。

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2024年8月13日 (火)

塩沢由典『複雑さの帰結』1997年、の「解題集」

本書は、戦後日本の社会科学書のなかで、最も創造的、innovative な成果の一つです。その内容には、知識論(Knowledge theory)、人間行動論、習慣論(habit theory)も含まれ、人文学(主に理論哲学)にも影響を与えずにはおきません。従いまして私も本ブログにて幾度か論じているのですが、それにも関わらず出版社品切れとなっています。仕方が無いので、塩沢氏の他の著作のように文庫化されることを願いつつ、デジタルリソース化を弊ブログで試みることにしました。無論、著作権が存在しますから全文をデジタル化できません。

ただ、塩沢由典氏が単行本として論文集を編む際、収録論文の終りに大抵「解題」なる著者自身によるコメントが付されます。これは読者にとり、極めてありがたいものです。何故なら、執筆のいきさつ、執筆動機、論文集発行時現在での自己評価、補遺等を含むものだからです。この「解題」が丁度よい文量で各章に付随しています。これをデジタルリソース化してその全容を可能な限り多くの人々に知ってもらおうと計画しました。

いずれ、すべての各章「解題」を弊ブログに掲載する予定ですが、とりあえず、今回は、本書の中心論文である「複雑さの帰結」(1993年)の「解題」をupしてみることとします。

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2024年5月13日 (月)

書評:関 良基『江戸の憲法構想 日本近代史の〝イフ〟』作品社 2024年3月

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関 良基『江戸の憲法構想 日本近代史の〝イフ〟』作品社 2024年3月

本書は、関 良基氏の手になる、「明治維新」を再考する三作目の著書です。
1)『赤松小三郎ともう一つの明治維新 ―テロに葬られた立憲主義の夢』2016年12月
2)『日本を開国させた男、松平忠固 ―近代日本の礎を築いた老中』2020年7月
これで、関 良基氏の「幕末維新」三部作(すべて作品社刊行)が世に問われたと言ってもよいでしょう。

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2024年4月22日 (月)

愚かな勉強法と賢い勉強法/ Stupid, or Smart Study Methods

Quora、というQ&Aサイトでたまたま見かけたのが下記。

(25) 頭の悪い人間のする勉強方法は? - Quora

ある回答者は、以下のように返信しました。

「解ってから先に進むと言うのが一番下手な勉強法です。」
「解らなくても良いからどんどん先に進む。ただし進みっぱなしでは駄目です。時々戻ってこなくてはならない。そうすると、あの時解っていなかったことが、驚くほど簡単に解っていることに気がつく。螺旋状の輪を描きながら先に進んで行くのです。」

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2023年5月13日 (土)

Glorious Revolution : Emergence of the Anglo-Dutch complex

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William of Orange III and his Dutch army land in Brixham, 1688 - Glorious Revolution - Wikipedia

 In the first place, during the Augsburg War, the Bank of England was established as a bond-receiving and issuing bank to finance the war effort. The Bank of England thus became a keystone of what P. Dixon calls the 'fiscal revolution' and J. Brewer the 'fiscal military state'. The union of the Dutch and English cohorts (1689-1702) became a military-financial complex. This resulted in a soft landing of world hegemony from the Netherlands to England.
Iwanami Shoten (1999), World History 16: Sovereign States and the Enlightenment 16-18th Century, p.60 (Kazuhiko Kondo, "Early Modern Europe").

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2023年4月30日 (日)

黒田亘の「認識論」

 本記事は、平凡社世界大百科事典第2版(1999年)、の項目「認識論」を私的に掲示したものです。

 たまたま本項目を瞥見した際、その見事な内容に感銘を受け、いったい誰が担当したのかと思い、項目執筆者を確認しますと、それは故黒田亘氏(哲学者、1928年10月21日~1989年5月31日)であると知り納得しました。

 道理で、簡潔に西欧哲学史を概観しながら、興味深い話題も取り上げ、最後には「認識論」の現代的意義/課題を提示して結語としています。素晴らしいの一言。

 本記事には著作権者がおり、ネット上、部分的に公開(無署名)されているだけですので、私的ではあっても全文を本ブログに掲示するのは違法行為となります。しかし、この見事な知見が事典項目の中に埋もれてしまうのは如何にも惜しい。そこで、著作権者から削除依頼が来るまでは、黒田亘の一ファンとして(こっそり)本ブログに掲載させて頂くことにしました。

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2023年2月 8日 (水)

弊ブログ主のインタビュー記事、第2弾(2023年2月)

 弊ブログ主(renqingこと、上田悟司)のインタビュー記事が、前回 同様、『風餐UNPLUGGED』11号、に掲載されました。雑誌目次は本記事後半に掲載しました。 もしご関心をお持ちいただけるようなら、下記、編集部(連絡先メール・アドレス)までお問い合わせください。

問い合わせ先
風餐編集部(府川さん) logos380@qd5.so-net.ne.jp

※今回の弊インタビューのテーマは、複雑系経済学、です。


 追記しますと、本
誌中の、「OIL, WATER and ROCK Dominic Berry」は、西欧人による関曠野(英文)としては世界初(?)のものではないかと思います。ご関心を頂ければ幸甚。

※正誤表(2023/02/14)頁はすべて本誌。
p.45  〔誤〕塩沢由典プロフィール「中央大学商学部教授。現在に至る。」
        〔正〕塩沢由典プロフィール「中央大学商学部教授。2015年同退職。現在に至る。」
p.47  〔誤〕上田「この理論は塩沢さん、谷口和久、盛岡真史の三人が」
        〔正〕上田「この理論は塩沢さん、谷口和久、岡真史の三人が」

※塩沢由典氏のHP上(短信・雑感欄)で、お褒めの言葉を頂戴しました。ご参照頂ければ幸甚。
塩沢由典公式ホームぺージ(新しいPortal: 2021年11月から)

 

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2022年12月17日 (土)

価格を決定するものは、「需要」ではなく、「費用」である(2)/ What determines price is not "demand" but "cost" (2)

 前回 の補遺のようなものを書きます。

 前回触れた、塩沢由典の「最小価格定理」に関しては、以下の論文も啓発的で、この定理についての理解を深めてくれます。

1)塩沢由典「生産性、技術変化、実質賃金」『季刊 経済理論』vol.56,no.3, 2019年/10月

上記の論文は、下記、J-STAGEサイトからPDFファイルとしてDLできます。

https://doi.org/10.20667/peq.56.3_7

 SMTの理論的帰結を、かなり簡潔に具体的データを利用して説明したものです。とりわけ「最小価格定理」から実際の経済問題を分析するとどのようなことが言えるかを語っていて、この定理の重要性、切れ味がよくわかります。途中、ベクトルや行列の計算式がありますが、躊躇せず、最後まで読むことをお勧めします。

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2022年12月15日 (木)

What determines price is not "demand" but "cost"

 Relative prices are determined by cost, not demand, is the most important proposition of the Theory of Value, which has been handed down from the classical school to Sraffa. The neoclassical champion, K. J. Arrow, has elaborated on this argument in a negative context, which I will quote from three places.

Kenneth J. Arrow, Frank H. Hahn, General competitive analysis, (Advanced textbooks in economics, v. 12), North-Holland, 1st ed. 1971 5th pri. 1988

 

Evaluation of K. J. Arrow's "Non-Substitution Theorem"

Chapter 1 Historical Introduction, p.14
Samuelson [1951] and Georgescu-Roegen [1951] showed that with one primary factor it is still true that relative prices of produced goods are determined by the tehnology, independent of demand conditions. This is, in a certain sense, a suprising resuscitation of the classical theory in which prices are determined by supply conditions alone. Since competitive production always minimizes costs, it follows that the technique actually chosen for the production for any commodity is also independnt of demand conditions, though it will depend, in general, on technological conditions in other industries. For more extended discussion, see Section 2.11.

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