生活史 (History of Everyday Life)

2026年6月16日 (火)

アンテ・フェストゥム(ante festum)と techno-cult/ ante festum, or Techno-cult

「近代 modernity」に関して、そこに暮らす人間たちには、共通の感性的特徴がありそうです。3つ取り上げます。弊ブログ記事1点と私の二つのメモです。

(1)弊ブログ記事からの引用

感覚の階梯、あるいは改訂〔2019年4月13日 (土)〕

 経済成長とはなんでしょうか。辞書的定義は、国民経済の規模が、年々拡大すること、となります。

 もっと直感的言うと、私たちが使用する日用品、食べ物、こういったものが、年々、その量が増え、品質が向上すること、また、私たちの暮らす住居や使用する建築物、都市や公共インフラがより大きくなったり、より便利になったりすること、と考えてよいでしょう。

 これは個人の感覚レベルで言えば、年々、自分の着るものがより豪華になったり、高級になったりすることでしょうし、これが国民全体が一様にそれぞれの所得に応じて、社会全体に感じられるようになることでもあります。

 とすれば、経済成長とは個々人の側から言えば、年々の環境の変化と同義です。それも数百年間といった「じわーっ」とくるようなペースではなく、数年とかせいぜい、十数年程度で、「ピンピン」と肌でわかる変化です。

 人は、日常に異変がおこれば驚きます。ドキドキしたりします。これは一種の興奮状態です。つまり、経済成長とは、人間の感覚レベルで言えば、常態化された軽い興奮の持続、ともみなすこともできます。

 この事態を柳田国男はこう言っています。

    ・・・、それよりも強い理由は褻(け)と晴(はれ)の混乱、即ち稀に出現する所の昂奮といふものゝ意義を、段々に軽く見るやうになったことである。実際現代人は少しづゝ常に昂奮して居る。さうして稍ゝ疲れて来ると、始めて以前の渋いといふ味はひを懐かしく思ふのである。
    柳田国男『明治大正史 世相篇』東洋文庫No.105、平凡社 、p.11

 現代の私たちが、近代経済成長が開始する以前をみるとき、どうにも分からなくなる時があるのは、ある種の「感覚」にズレ、あるいは断絶がある、からということも頭に入れておくべきでしょう。


(2)私のメモから(その1)

川北稔『イギリス近代史講義』講談社現代新書(2010年)

「しかし、つねにそれまでより、よい生活をしなければならないという考え方が、資本主義の別の意味での定義なのではないか、と私は思っています。」(p.66)

著者川北は、同書でこのことを、「成長パラノイア」とも呼んでいます。


(3)私のメモから(その2)

木村敏『時間と自己』1982、中公新書

「分裂病者のアンテ・フェストゥム意識 ante festum
 分裂病の患者は、つねに未来を先取りし、現在よりも一歩先を読もうとしている。彼らは現実の所与の世界よりも、よい多く兆候の世界に生きているといってよい。中井久夫氏の表現をかりれば、彼らは「もっとも遠くもっともかすかな兆候をもっとも強烈に感じ、あたかもその事態が現前するごとく恐怖し憧憬する」(『分裂病と人類』東大出版会p.8)。この表現にささやかな修正を試みるとすれば、分裂病者は未知なる未来の兆候を「あたかもその事態が現前するごとく」恐怖し憧憬するというよりは、むしろその事態がまだ現前していないということに恐怖と憧憬を抱くのだと言うべきだろう。すでに現前している事態に対しては、それが更なる未来の兆候として読まれるのでないかぎり、分裂病者はむしろ驚くべき無関心さを示す。」同書、p.86-7

「 つまり、分裂病者でなくても、われわれ人間のすべてにとって、将に来るべき未来という時間様態は、自己の実存的な自己実現を可能ならしめる現存在の意味方向として、ほとんど特権的ともいえる重要性をもっている。自己は自己であり続けるためには、そのつど新たに自己にならねばならぬ。この「自己になる」という契機を可能にしているのが、将来的未来ともいうべきこの時間様態なのである。」同書、p.89

「未来先取り的な人たち
 これまでのところでは、このアンテ・フェストゥム意識あるいは未来先取的な時間構造を、精神分裂病という異常な病的事態の特徴として取り出してきたが、これをわれわれの正常な日常性にはいっさい含まれない、それ自体異常な意味方向であると考えることは誤りである。未来が未知なるものの、極限的には死そのものの代名詞として、憧憬と恐怖を誘うということには、分裂病者のみでなく、有限な個別的生命を生きている人間のすべてについて語りうることなのである。われわれの多数が正常で健康な日常生活をいとなんでいるのは、この未知なるもの、反自己的・反生命的なるものに対する有効な対応策がとられている限りのことにすぎない。」同書、p.95

「分裂病者というのはこの最後にあげたタイプの、つまり自己自身を内部から否定しようとする未知性に対する保護膜が弱すぎて有効な遮光がえられないタイプの、もっとも極端な場合だと考えることができる。同じタイプに属しながら分裂病の発病にまでは至らなかった人の数は、現実の分裂病者の何倍にも及ぶだろう。こういう「分裂病親和的」な人たちは、なんら病的な分裂病性の特徴を示すことはないけれども、分裂病者とのあいだに一つの共通点をもっている。それは、この人たちにとっては世界がそのつどの自己の自覚を促す未知性をおびて現前し、したがって彼らはそのつど未来の可能性を先取りすることによって、いわば未来の先を越すという仕方で自己実現を達成しようとするということであり、要するにアンテ・フェストゥム的な意識や行動の様式を身につけているということである。」同書、p.96-7

以上、3点です。

最後の引用で、

「この人たちにとっては世界がそのつどの自己の自覚を促す未知性をおびて現前し、したがって彼らはそのつど未来の可能性を先取りすることによって、いわば未来の先を越すという仕方で自己実現を達成しようとする」

と引きました。

これを読んですぐ思い出すのは、西海岸LA、シリコンバレーあたりに出没する、Cult-technologist、や、なにかというと、すぐ The Singularity を祭の神輿に担ぎまわって、お祭り気分の騒々しい連中、のことです。

半世紀も前の、ローマクラブ報告「成長の限界」が、ますますそのリアリティを増しているのに、AIで知的限界突破、核融合でエネルギー限界突破、遺伝子編集で食料限界突破とか言っている人々が絶えないのは、現代世界で elite と呼ばれる一群の人々が、一種の「病気」、といって悪ければ、常に、軽い「ante festum」状態にあるからではないか、という疑いを私は深く持っています。

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2023年9月20日 (水)

ドラード和世陀:日本の カサ・ミラ〔2〕/ Waseda El Dorado: Casa Milà, Japón〔2〕

前回記事、沢田マンション:日本の カサ・ミラ〔1〕/Sawada Manshon: Casa Milà, Japón〔1〕: 本に溺れたい

を仲間内で拡散しましたら、早稲田にもあるよ、と知人からご教示いただきました。
下記(画像は ドラード和世陀 - Wikipedia 様より拝借)。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/c/c2/Waseda_El_Dorado_1.jpg

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2023年9月19日 (火)

沢田マンション:日本の カサ・ミラ〔1〕/Sawada Manshon: Casa Milà, Japón〔1〕

Antoni Gaudíに比せられたら、冥土の沢田嘉農さんも苦笑されるかも知れませんが・・・。私の気儘な連想ということで、ご勘弁。

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https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/64/Kochi_City_Sawada_Mansion_Aug._12%2C_2016.jpg

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2022年9月28日 (水)

日本の若者における自尊感情/ Self-esteem among Japanese Youth(2)

(1)より、(3)へ

 たまたま、本日見かけたネット記事に下記のようなものがありました。

中国ではありえない!?日本でまだ「当たり前」に行なわれていること - TRiP EDiTOR

 これも、社会が持つ「教育」機能と言えるでしょう。中国人が一見「自信満々」に見えてしまう理由の一端でもあります。

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2022年9月26日 (月)

現代日本における「貧困」ー国際比較/ Poverty in Contemporary Japan: An International Comparison

 ここ数年間、現代人は「新型コロナ感染症」の大波に翻弄され続けてきました。無論、現代日本もその例外ではありません。いま、浮上してきているのは、「貧困」の問題です。そこで、現代日本における「貧困」問題が、国際的にみてどう見えるか、統計データで確認しておくことにします。

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2022年6月26日 (日)

菊池寛「私の日常道徳」大正十五年一月(1926年)

 これは、『ちくま日本文学027 菊池寛 1888-1948』ちくま文庫(2008年)pp.449-51、にあります、菊池寛三十八歳の処世訓です。作家というより、成功する実業家(businessperson)のもの、といった感がありますし、意外にも方法的人間なのだ、と思い直しました。デカルトの『方法序説』を少し彷彿とした、とまで云うと大袈裟でしょうか。下記です。

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2022年5月 8日 (日)

Seki Hirono and Feminism (2)

 This article is a continuation of (1). This second part will be a review of the following book.

Dolores Hayden, The Great Domestic Revolution: A History of Feminist Designs for American Homes, Neighborhoods, and Cities, 1981, The MIT Press, Cambridge, Massachusetts and London, England

This review was written as a Japanese review of the following Japanese translation of the book.
The English translation of Seki's Japanese text was provided by DeepL.

ドロレス・ハイデン『家事大革命 アメリカの住宅、近隣、都市におけるフェミニスト・デザインの歴史』1985年12月、勁草書房刊、東京


 


The following words are found in p.vii of this book. I reproduce them here because they are interesting.

Away with your man-visions! Women propose to riject them all, and begin to dream  dreams for themselves.
Susan B Anthony, 1871

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関 曠野とフェミニズム(2)

 (1)の続きです。この第二弾は、下記の本の書評となります。

ドロレス・ハイデン『家事大革命 アメリカの住宅、近隣、都市におけるフェミニスト・デザインの歴史』1985年12月、勁草書房刊、東京

なお、本書は下記の邦訳となります。

Dolores Hayden, The Great Domestic Revolution: A History of Feminist Designs for American Homes, Neighborhoods, and Cities, 1981, The MIT Press, Cambridge, Massachusetts and London, England


 


本書、vii に、下記の言葉が掲げられています。ちょっと面白いので転載しておきます。

Away with your man-visions! Women propose to riject them all, and begin to dream  dreams for themselves.
    Susan B Anthony, 1871
(あなた方が持っている男の夢は捨て去りましょう!
  女たちはそれらをすべて拒否し、自分自身のために夢を見ることを始めようではありませんか、スーザン・B・アンソニー、1871年)

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2021年12月31日 (金)

2022年はインフレ元年:コストインフレの半世紀へ/ 2022: The First Year of Inflation: Toward a Half Century of Cost Inflation

 2022年は、ドネラ・メドウズ(Donella H. Meadows)を主査としてローマ・クラブ・レボート『成長の限界 The Limits to Growth 』が1972年に発表されてからちょうど50周年です。50年後の眼から見ても、驚くべきことにこの報告内容はほぼ正確だった、と言えるようです。下記はその内容を象徴する有名なシミュレーションモデル図です。
〔出典は、電力自由化Q&A :「電気を選ぶ」ってどういうこと? | 電力・ガス比較サイト エネチェンジ〕

Limit-of-growth-graph

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2020年5月 1日 (金)

種苗法の「改正」に反対します ― アベ売国政権の売国的法改正

 コロナ禍の喧噪の裏で、日本のただでさえ脆弱な「農」と食料安全保障を、危機的な状況に陥れる法案がアベ政権によって国会に提出されています。種苗法改正案です。

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