藤田 覚 『松平定信』中公新書(1993年)
良書である。徳川の治世は、およそ270年。その中にあって、19世紀半ばの列島の国制変動に直接つながり、かつ徳川政権が主導的に政治刷新を行い得た、最後の転回点と言える寛政の改革。本書は、この改革の実態とその主導者、松平定信の政治家としての人物像を、新書という教養書の枠内で描き切った、一つの優れた晩期徳川政治史である。
私の目下の関心は、19世紀の日本国制史の変動にある。つまり徳川氏を棟梁とする、権力多元的な武家連合政権から、いかにして、京の一隅に逼塞せしめられていた「禁裏」を名目的元首とする、権力一元的な大日本帝国なる近代主権国家が誕生したかにある。
| 固定リンク
| コメント (5)
| トラックバック (0)
最近のコメント